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分割しづらい財産を分割する4つの方法

2010.03.01

「財産」と一口に言ってもその内容はさまざまですが、相続財産の多くは不動産が占めていると言われます。
現金であれば1円単位で分けることができますので、納得のいく分割というのもそれほど難しいことではありませんが、不動産の場合はそう簡単にはいきません。自宅や賃貸マンションを法定相続分通りにきれいに分けることは難しいですし、分割に納得はできても、不公平感は否めない、ということもあります。遺産分割のトラブルが絶えないのは、このあたりに原因があると言えます。
そこで今回は、分割が難しい財産をどのように分けるのかということについてお話していきたいと思います。

 

(1)現物分割
名前のとおり、相続財産を現物のまま分割することをいいます。不動産の場合、そのままの状態で数人の相続人に分けるということはできませんので、「分筆」という方法で分割します。 不動産は「筆」という単位で表されており、この一筆の土地を二筆、三筆と分けていくのが分筆です。広い宅地であれば、分筆して相続し、分けた後でそれぞれが家を建てたり月極駐車場に変えて収益を得るなど有効利用ができます。
しかし分筆にも限度があります。たとえば30坪の土地を10坪ずつ3人で分けたとして、その土地に価値はあるでしょうか。たった10坪の土地では、家を建てるのも難しいですし、売却しようにもなかなか買い手は見つかりません。また、二つの道路に面している土地を分筆した場合、それによって接する道路が一つになってしまえば土地の評価が下がります。分筆を選択する場合は、分割後も土地を有効活用できるように十分に検討しなければなりません。

 

(2)代償分割
分割が困難な場合によく利用されます。不動産や事業のように、分割に適さないものを一人もしくは一部の相続人が相続する場合は、代償金を支払うことで他の相続人を納得させるという方法をとります。
しかし、当該不動産や事業を取得する相続人は、代償金と自らの相続税を負担しなければなりませんので、相当の資力が必要です。代償金については他の相続人の同意が得られれば分割払いもできますが、後々のトラブルを回避するためには一括現金払いが望ましいでしょう。また、代償金を交付する場合は遺産分割協議書に記載をしなければ、自身の課税価格から差し引くことができませんので、注意が必要です。

 

(3)換価分割
換価分割というのは、「まずお金に換えてから、相続人で分けましょう」という方法です。財産が現金の状態であるということが、分割には一番適しています。最近は親と同居することも少なくなっており、親の居住用財産を相続してもそこに住まないということがよくあります。このようなケースであれば、売却して換価し、その売却代金を分割するのがよいでしょう。売却する場合は、売却益に対して譲渡所得税が課せられます。相続税を支払っていれば、取得費加算の特例(※1)が利用できますので、ぜひ有効活用してほしい方法です。
ただし、換価分割をする場合には注意が必要です。小規模宅地等の特例(※2)は、相続開始時から申告期限まで引続き当該不動産に居住(又は事業を継続)していなければ適用となりません。従って、この特例を利用して相続税の節税を考えている場合は、申告期限前に換価分割することができなくなります。

※1 取得費加算の特例・・・・相続により取得した不動産を売却した場合、支払った相続税を当該不動産の「取得費」に加算できるため、売却益が少なくなり、譲渡所得税が安くなるというもの。
譲渡所得(売却益)=売却代金―(取得費+譲渡費用)?特別控除

※2 小規模宅地等の特例・・・・相続によって取得した宅地が被相続人又は被相続人と生計を一にしていた親族の事業用や居住用の宅地であった場合には、一定面積までの部分は通常の評価額から80%又は50%を減額するというもの。

 

(4)共有
不動産は共有名義で所有することもできますので、共有するというのも一つの方法です。「共有」となると、合意形成も容易でしょう。
しかし、不動産の共有は避けるべし!というのが一般論です。なぜなら、共有名義の不動産を売却する場合などは、名義人全員の同意が必要になるからです。名義人全員の同意を得るというのは、意外と難しいものです。不動産は処分しやすい形で所有しておいたほうがよいでしょう。
「相続人同士が仲がよいから、トラブルの心配はない」「分割がうまくいかないので、とりあえず共有にしておきたい」などの理由で、安易に共有してしまうケースは多くあります。しかし、仲のよい家族が財産をめぐって「争族」になるケースは少なくありませんし、共有財産が相続されていくうちに共有名義人が増えていき、収拾がつかなくなるということもよくあります。
もちろん「共有」にはメリットもあります。たとえば、いずれ売却する予定がある自宅を同居している母子で共有にした場合、実際に売却した際に3,000万円×共有人数の特別控除を受けることができます。しかし、このように共有することで享受できる具体的な方法がなければ、単独名義にしておく方が賢明でしょう。

 

これまで見てきたように、分割方法というのはいくつかありますが、それぞれにメリット・デメリットがあります。これを解決するためには、生命保険に加入して納税資金や代償金を準備しておくことや、遺言書を残して分割方法を予め指定しておくことなど、生前から対策を考えておくことが重要です。
相続財産が平等に分けられるような都合のよい状態にあるということはまれです。だからこそ、相続に関してはトラブルが絶えないのです。自分の死後に家族が戸惑わないためにも、生前に財産を分けやすい状態に変えていくことをお奨め致します。

 

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筆者紹介

江頭 寛
福岡相続サポートセンター
代表取締役社長

生前対策から相続発生後の申告・納税に至るまで、皆様から寄せられる無料相談への対応や、希望する幸せな相続の実現に向けての対策立案と実行支援を、弁護士・税理士・司法書士・不動産鑑定士等の先生方をコーディネートしながら日々やらせて頂いてます。お客様にとってベストな相続並びに資産の有効活用を徹底的にサポートすることが私の最大の使命です。また、相続対策セミナーも全国各地で積極的に開催中。まずはお気軽にご相談ください。

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