令和2年12月10日に与党より令和3年度の税制改正大綱が公表されました。
税制改正大綱とは、各省庁からあがる税制改正の要望などを受け、与党の税制調査会が中心となって翌年度以降の税制改正の方針をまとめたものです。税制改正大綱は、いわば税制に関する法律改正のたたき台であり、毎年12月中に翌年度分の税制改正大綱が閣議決定されることになっています。通常の予定でいくと、国会での審議を経て、3月末国会承認、4月1日の法律施行となる見込みです。
今回の税制改正は新型コロナウイルス感染症の影響で経済が落ち込む中、思い切った税制改正が出来なかったようで、総じていうと小粒な改正であったように思われますが、今回のメルマガでは資産家に影響があるものを抜粋して解説してゆきます。
なお、税制改正大綱は税制改正の素案となりますが、本年度の国会を通過するまでは正式な確定事項ではありませんのでご留意ください。
(1)住宅取得資金贈与の非課税措置の拡充
親から子、孫などへの生前の財産移転対策として広く活用されている住宅取得資金贈与ですが、以下の改正が行われます。
<改正の概要>
①非課税限度額について、2020年(令和2年)4月1日から2021年(令和3年)3月31日までの間の非課税限度額と同額に据え置かれます。
②対象となる住宅用家屋の床面積要件の下限が50㎡から40㎡に引き下げられます。
(相続時精算課税制度の特例についても同様)※但し所得要件があり(合計所得1,000万円以下)
<適用時期>
2021年(令和3年)1月1日以後に贈与により取得する住宅取得等資金に係る贈与税について適用
<改正イメージ>
①非課税限度額
②床面積要件
(2)教育資金の一括贈与の非課税措置の見直し
住宅取得資金贈与と併せて富裕層の生前対策として広く活用されている教育資金の一括贈与ですが、2021年(令和3年)3月31日までの適用期限が延長されたとともに節税利用目的を是正する目的で一定の改正が行われます。
<改正の概要>
①教育資金の一括贈与の非課税措置が2年間延長されます。
②贈与者が死亡した場合は、死亡の日までの年数にかかわらず、管理残額を受贈者が贈与者から相続等により取得したものとみなして、相続税が課されます。(一定の場合は対象外)
③贈与者の子以外の直系卑属(孫など)に相続税が課される場合は、管理残額に対応する相続税額が相続税額の2割加算の対象になります。
<適用時期>
2021年(令和3年)4月1日以後の信託等により取得する信託受益権等について適用されます。
<改正イメージ>
従前でも駆け込みの贈与の場合には、3年内に限り管理残額を相続財産として受贈者にて相続税課税の対象となっておりましたが、今回の改正により、3年内の贈与分に限らず、2021年(令和3年)4月1日以後の贈与分はすべて相続財産への加算の対象となります。
本改正の影響を受けそうな資産家の方で、まだ教育資金贈与の特例を活用されていない方は本改正前の適用をお勧めします。
なお、本制度と併せて結婚・子育て資金の一括贈与の非課税措置についても同様の改正(適用期限の2年間延長及び2割加算の対象等)が行われておりますが、本メルマガでは割愛させて頂きます。
次回レポートでは、
(3)固定資産税の据え置き措置
(4)住宅ローン控除の改正(13年間の特例の適用期限の延長及び床面積要件の緩和)
(5)その他注目点 について、解説いたします。
~その2へ続きます~