はじめに
日々、お客様から相続に関する多種多様なご相談をお受けしております。
特に昨今、賃貸不動産を今後どのように維持し、承継していくべきかというお悩みは、以前にも増して切実なものとなっているように感じられます。
賃貸不動産は、収益を生む「資産」としての顔を持つ一方で、将来的には次世代へ引き継ぐべき「相続財産」となります。
今回は、この賃貸不動産経営と相続の関係性について、改めて考察していきましょう。
資産、金融商品としての側面
相続で賃貸事業を引き継がれた方、あるいは投資用として購入された方、その背景は様々でしょう。
賃貸不動産の最大の強みは、綿密な収支計画を立てることで、家賃という定期的な収益、すなわち「安定したキャッシュフロー」を生み出せる点にあります。
また、適切なメンテナンスを施すことで、長期運用が可能な息の長い資産となります。
インフレ局面における強さも見逃せません。
地域によっては物件価格や賃料の上昇が期待でき、貨幣価値の下落に対する備えとなります。
さらに、相続評価による「資産圧縮効果」を活用した相続税対策としても有効です。
まもなく政府による「5年ルール」が適用される可能性が高まっていますが、長期保有を前提とするならば、現金よりも相対的に高い資産圧縮効果を享受できるでしょう。
※政府による「5年ルール」について2025年12月22日配信相続レポート参照
https://www.e-souzok.com/report/archives/753
しかし、賃貸不動産経営においては固定資産税や保険料、修繕費といった維持コストが不可欠です。
特に近年の物価高騰を受け、大規模修繕費は以前よりも高額化する傾向にあります。建築資材の高騰や人手不足の影響で、10年前の想定予算では収まらないケースも増えています。
将来に向けた積立計画の重要性は、かつてないほど高まっているといえます。
「最終的には売却して土地代が残れば良い」と割り切る方もいれば、「先祖伝来の土地を何としても守り抜きたい」と願う地主の方もいらっしゃいます。
後者の場合は、土地を手放さないための具体的な方策を立て、実行に移さねばなりません。
賃貸不動産は、最終的に「修繕を行いながら建て替えに向け保有を継続する」か、あるいは「売却して収益を確定させる(出口戦略)」か、大きく分ければいずれかの選択を迫られます。
日本においては人口減少社会という長期的なリスクを鑑みれば、日々の経営の見通しと出口戦略の検討は、避けては通れない課題なのです。
相続財産としての賃貸不動産
承継において最も頭を悩ませるのは、「誰を後継者にするか」という問題ではないでしょうか。
遺言書で特定の承継者を指定していない場合、遺産分割協議によって決まることになりますが、ここで注意すべきは「共同経営(共有)」のリスクです。
共有状態は、一見平等に思えるかもしれません。
しかし、いざ経営の現場となると、修繕の是非や売却方針を巡って所有者間で意見が対立し、経営が停滞するケースが後を絶ちません。
さらに将来的に、二次相続、三次相続と進むにつれ、面識のない親族と共有名義になり、意思疎通はより困難を極めることでしょう。
最終的には売却も修繕も一切できなくなる『塩漬け不動産』と化してしまうリスクがあります。
また、価値の高い不動産が一つしかない場合、共有を避けるためには他の相続人に支払うための代償金(現金や流動性の金融資産)が必要です。
しかし、実際には不動産価値に見合う資金準備が整っていないケースが多く見受けられます。
他方で納税資金の確保も同様です。
後継者に運転資金と納税資金を厚く相続させようとすれば、今度は他の相続人の取り分が不足し、争族の火種となりかねません。
従って、不動産のみならず、金融資産を増やすための「資産形成」を並行して行うことが極めて重要となるのです。
賃貸経営の検討課題は多岐にわたります。
遺言による後継者選定、認知症対策としての家族信託、所得税や相続税対策しとしての法人化の検討、さらには生前贈与の活用など、これらをバラバラに考えるのではなく、一貫した戦略として検討する必要があります。
将来的に売却を検討しているケース
「自分の代で売却すべきか、相続を待つべきか」というご相談も頻繁にいただきます。
売却の動機は、納税資金の確保といった経済的な理由から、管理の負担軽減といった心情的な理由まで、ご家庭ごとに様々です。
ここでは、現場でよく耳にする「生の声」をご紹介します。
【自身の代で売却を検討する場合】
・「自分の目が黒いうちに処分ができ、肩の荷が下りた」
・「家族会議を通じて、不動産を継がない方針を明確にできた」
・「現金を活用し、生前贈与や生命保険など別の対策へシフトできた」
・「売却資金で老後の施設費用を確保し、家族旅行を楽しむ余裕が生まれた」
・「借入の返済や今後の大規模修繕の負担と不安がなくなった」
・「遺産分割が容易になり、将来の紛争リスクを回避できた」
・「先祖代々の土地を手放す葛藤はあるが、判断を先送りにせず責任を果たせた」
・「将来の相続税納税資金の準備ができ不安がなくなった」
・「不動産の相続評価と現金化による評価の乖離で相続税が上がることがある」
【相続した後に売却する場合】
・「不動産として保有し続けたことで、相続税評価額を低く抑えられた」
・「売却までの間、家賃収入を継続的に得ることができた」
・「売却の判断や時期の一切を子供たちに委ねられる」
・「所有期間が引き継がれるため、譲渡所得税(長期譲渡)の負担を軽減できることがある」
・「相続人間で売る・売らないの意見がまとまらず、遺産分割協議が難航する恐れがある」
・「申告期限までの売却が間に合うか、精神的なプレッシャーがかかる」
・「申告期限まで保有もしくは事業継続しないと小規模宅地等の特例が適用できない」
おわりに
賃貸不動産を所有する皆様にとって、今後の道筋を立てることは、ご自身のみならず次世代の人生をも左右する重大な責務です。
不動産は、正しく運営すれば「富」を生む力強いパートナーとなります。
しかし、外部環境の変化や建物の老朽化といった現実に目を背けることはできません。
建物は物理的に古くなり、修繕コストは膨らみます。
だからこそ、今から将来に向け計画的な準備を始める必要があります。
当社では、不動産の売却査定に加え、不動産税制や相続税に詳しい提携税理士と連携し相続税のシミュレーションも可能です。
不動産賃貸経営の「攻め」と、相続対策の「守り」について、いつでもご相談をお待ちしております。
将来に向けた最善の一歩を、私たちと一緒に踏み出してみませんか。


